三重テレビ『ゲンキみえ生き活きリポート』2018年7月15日

津市で藍染工房『呼吸』を開く藍染師・岡博美さんは、京都の大学で染織を学び、友禅染のメーカーに就職。その後、さらに天然染料を学ぶため大学院へ。藍染の魅力を追い求め作品制作を行っています。
2009年に津市内に藍染工房『呼吸』を作り、自身の作品制作の場として、活動中。
岡さんの作品などを紹介しながら、藍染の魅力を紹介します!

藍を仕込むことを『藍を建てる』といいます。
大きな瓶で10日ほど発酵させて、ようやく染められる状態に仕上がります。

藍染師・岡博美さん。
京都の大学で染織を学び、友禅の工房に就職。
その後、さらに天然染料を学ぶため大学院へ。
2003年に藍染工房『呼吸』を設立し、2009年、津市内の自宅に工房を移転しました。

 

「もともと染織というより、モノをつくることが好きだったので、美大に入る時も工芸と決めていました。
『じゃ、染織にしようかな(笑)』くらいの軽い感じで入ったものの、もう20年以上、染織に携わっています。
藍を仕込む、発酵させる工程を初めて見た時、本当に衝撃を受けました。
手放しで『本当にこんなに美しいものがあるのか!』というくらいの衝撃でした」

 

こちらが工房内の床に埋められた4つのかめ。
手前は仕込んで1ヶ月ほどのもの。
奥は2ヶ月ほどたったもの。
仕込んだすぐの方が藍が濃いかめで、使っているとだんだん藍が薄い甕になっていきます。
表面に浮いた『藍の華』と呼ばれる泡が寄ったもので色の違いがわかるでしょうか。

 

こちらが原材料の藍の葉。
それを乾燥させ、更に発酵させて堆肥状にした『すくも』を購入し、甕の中に仕込んでいきます。
藍染めの歴史は古く、飛鳥・奈良時代に伝わったと言われ、江戸時代以降は、盛んに染められました。
甕を地中に埋めるスタイルは江戸時代より少し前からだそうです。

 

ここで岡さんの作品を紹介!
こちらの『光がつくる世界』は、『中房総国際芸術祭いちはらアートミックス』に出展。
藍染めの作品を廃校となった小学校のプールを使って展示しました。
プールの下から見上げる作品となっています。

 

「違う柄でその透け感を作ってある布が二重になっていて、晴れると上の方の透けている部分の光の影が二層目に落ちてきて、重なることで初めて一つの絵になって見えているという作品です。
晴れているときにしか見えないんです」

と、岡さん。

 

こちらも岡さんの作品。
同じ藍でも、すべてそれぞれ違う色が出ています。

「濃い色から濃い色までの色の幅もあれば、綿や麻など、生地によっても発色は全然違いますし、そういう点も面白いかも知れませんね」

と、岡さん。
さまざまな色の変化を見せる藍染の魅力なんですね。

 

それでは藍染を体験!
絞った場所だけ染まらず、それが模様になる絞り染め。
絞る場所を決めて、輪ゴムや紐で縛っていきます。
この縛り方の強さでも、染まり具合が変わります。

 

藍染の前に、生地をアルカリ性の水に浸します。

 

そして染める作業。
藍は空気に触れると色が変わりはじめるため、一度つけたら水中から上げないように、ゆっくり動かしながらじっと我慢。
一度引き上げてから、若くて色の濃い藍に再び浸けて仕上げます。

 

水洗いすると、さらに美しい藍色に染まっているのがわかります。
絞っていた輪ゴムを外して、最後によく水洗いをして完成!

 

このあと乾燥ですが、本来ならば、色を定着させるため、1週間以上は日陰で干すそうです。
世界にひとつの藍染のスカーフ。
体験教室などは開催していませんが、グループで申込みがあれば対応してくれるそうです。

 

ちなみに、岡さんの作品に見られるのは、型染。
岡さん自らデザインをおこし、型紙を彫り、そして染めない部分に糊をのせてから染色。
気が遠くなるような手間と時間をかけて染め上げています。

「今はまだ藍の色に助けられて作っていますが、『藍の色を活かしきっているね』と言われるくらい作ることができるようになりたいです。
世界中で藍は染められていて、世界中に藍の素となるいろいろな草があり、その国の気候にあった染め方をしています。
日本でも沖縄の藍と、こちらの藍は違うし、染め方も違います。
でも私はこのあたりのタデ科の藍をすくもにして染めた色が一番好きです。
素晴らしい技術があるということを知ってもらえたらとても嬉しいです」

自然の色合い、美しさを引き出す藍染。
岡さんは、静かにその可能性に挑戦しています。